凛花は大学を卒業し、一般企業に就職した。仕事内容は経理。
自宅から会社までは電車で四十分。その間、電車に揺られながら音楽を聴いている。
それはいつものように満員電車から降りた時のこと、突然背後から声を掛けられた。
「凛花、久しぶり」
振り返ると、そこには同じ中学校出身の二つ上の先輩、浩平がいる。
彼は中学校の時、特に目立ちもせず、モテたわけでもない。外見はいつも猫背気味の体勢で、おてもやんのような顔をしている。実際、あだ名はおてもやん先輩だった。彼は卒業する時、凛花の下駄箱にラブレターを残していたが、そこに書かれていたのは携帯電話の番号。付き合ってくれるなら電話して下さいというような内容だったと記憶している。もちろん凛花は電話をかけなかった。彼の弟が同級生なので、何度も『兄貴と付き合ってくれ』と頼まれもしたが、彼の外見はどちらかというと生理的に受け付けない。性格は暗いというイメージが強かったせいもあるのだろうけど……。今の彼は成長したせいか、少しは明るそうな雰囲気で、嫌悪感は抱かなかった。
「お久し振りです」
笑顔で答える凛花を見て、浩平はおてもやんの顔を精一杯笑顔に変えた。
「いつもこの時間の電車なの?」
「ええ。あれ、先輩もこの駅に会社があるんですか?」
「そうだよ。会社の営業をやってる。何だ、いつも同じ電車だったのかもな」
浩平と付き合うきっかけになったのは、この再会だった。
自宅から会社までは電車で四十分。その間、電車に揺られながら音楽を聴いている。
それはいつものように満員電車から降りた時のこと、突然背後から声を掛けられた。
「凛花、久しぶり」
振り返ると、そこには同じ中学校出身の二つ上の先輩、浩平がいる。
彼は中学校の時、特に目立ちもせず、モテたわけでもない。外見はいつも猫背気味の体勢で、おてもやんのような顔をしている。実際、あだ名はおてもやん先輩だった。彼は卒業する時、凛花の下駄箱にラブレターを残していたが、そこに書かれていたのは携帯電話の番号。付き合ってくれるなら電話して下さいというような内容だったと記憶している。もちろん凛花は電話をかけなかった。彼の弟が同級生なので、何度も『兄貴と付き合ってくれ』と頼まれもしたが、彼の外見はどちらかというと生理的に受け付けない。性格は暗いというイメージが強かったせいもあるのだろうけど……。今の彼は成長したせいか、少しは明るそうな雰囲気で、嫌悪感は抱かなかった。
「お久し振りです」
笑顔で答える凛花を見て、浩平はおてもやんの顔を精一杯笑顔に変えた。
「いつもこの時間の電車なの?」
「ええ。あれ、先輩もこの駅に会社があるんですか?」
「そうだよ。会社の営業をやってる。何だ、いつも同じ電車だったのかもな」
浩平と付き合うきっかけになったのは、この再会だった。