「ボク……ちょっと行ってくる」

「は? 何言ってんの!! って、どこに!?」

「晃永くんに……ボク、言いたいことあるから」


キュッと。

雲母ちゃんがボクの袖を引っ張った。


「やめなって!!

やられて終わっちゃう!!

黎じゃ、無理!!」


そう言う雲母ちゃんの言葉、分かるよ。

ボクは晃永くんみたいに筋肉ないし。

細いし。

弱いし。

きっとケンカしたらボコボコにやられちゃうと思う。

でも。


「ボク、負けないもの持ってるから」


ボクには負けないものがある。

晃永くんになくて、ボクにあるもの。

ボクは、これで勝負するんだ。


「黎!!」


ボクは雲母ちゃんの腕を振り切って走りだした。