「詩音さん、ちょっと出てきますね。
時間までには戻ってきますから。」


「いってらっしゃい。」


言わばあたし達は、リードで繋がれて走り回る犬のようなものなのかもしれない。


一見自由なようで、でもその鎖は彼女の手の中にあるのだから。


エサはお金だろうか。


この街は、金に支配されている。


そしてそれに翻弄されているのだろうし、薄汚いけれど、あたしも染まっているのだろう。


それがどんな色なのかは、知らないけれど。


あたし達は、女王の元へと金を運ぶ。


女王は、ただそれが運ばれるのを、高みから見つめているだけ。


嘲笑いながら、酒を酌み交わしながら。


誰もが頂点を目指していた。


けれどもこの街では、そんなものは夢幻に消える。


キャストは店に飼われるし、その上には元締めがいて、そんなものがわんさかある。


繁栄と衰退を繰り返しながら、あたし達は結局、この街の歴史の一部となるだけのこと。


代わりなんていくらでもいて、だから誰もがみな、確固たる居場所を求めているのだろうけど。


理由は何にせよ、この場所に執着しているのには変わりない。