「アミさん、そればっかだね。」


アキトはどこか可笑しそうに笑う。


この女がどこの誰かは知らないが、でも瑠衣とただならぬ関係なのは読み取れる。


なのにこの場にいるあたしは、きっと滑稽なのだろうけど。



「瑠衣のことだし、どうせ寝てるだけじゃない?」


「まったく、人の気も知らないで。」


「ご執心だね。」


言われた彼女は不貞腐れるように肩をすくめた。



「連絡よこしなさい、って、伝えといてよ。」


「まぁ俺には、あんな男のどこが良いんだかさっぱりだけど。」


それはきっと、あたしにも言っているのだろう台詞。



「瑠衣はあたしのものなんだから、悪く言わないでちょうだいね。」


そしてアミさんは、色香を引き連れ夜の街へと消えていった。


あの外国製のボディーソープの香りは、忘れたことがなかったけれど。


嫌な場面に出くわしてしまったと、心底思う。



「とんだ邪魔が入った。」


心にもないことを言いながら、アキトはその背を見送り、あたしへと顔を向ける。


どうせわざと聞かせたくせに。



「まぁ、瑠衣の上客だから仕方がないけど。」


彼があの女を抱いているのだと、遠巻きに言っているのだろうけど。


そんなことはもうわかりきっているし、だからどうだということもない。


ただ少しだけ、虚しくなるが。