冬の夜風を肌に感じながら、吐き出した吐息はネオンの色に溶けていく。


この街は、息苦しくて堪らない。



「百合?」


名前を呼ばれ、弾かれたように視線を戻した。


すると彼は、嬉しそうな顔で小走りにこちらへと近づいてくる。



「アキト、どうしたの?」


「可愛い子がいると思ったら、百合だったから。」


臆面もなく、アキトは言う。


この人は、きっとみんなにこう言っているに違いない。



「何やってんの?」


「ちょっと用事あってね。」


アキトと立ち話をしていると、まるでホストにキャッチされた女のよう。


だから歩き出したのに、何故か彼も横をひっついてきた。



「百合、あんまこんな時間にフラフラしてちゃダメじゃんかぁ。」


「どうして?」


「だって、変な男が多いじゃん。」


「アキトみたいな?」


問うと、彼は大爆笑を返してくれた。


アキトのことは嫌いじゃないけど、でも、仲良くする理由はない。



「俺よりずっと、瑠衣の方が危ないけどね。」