「百合りん、こんな店出てどっかのバーで飲み直そうや!」


こんな店、とホストを前に言える彼女はすごいと思うけど。



「良いなぁ、俺も後で行って良い?」


「ジュンはあかーん。」


「ケーチ。」


ふたりの子供みたいな会話を聞きながら、仕方がなくもチェックを済ませた。


そして真綾が最近お気に入りなのだというバーに連れられた。


先ほどのホストクラブとは打って変わって、落ち着いた雰囲気のお洒落なお店だ。


あたし達はカウンターに腰を降ろすが、正直こういうところは苦手で、煙草ばかり吸ってしまう。



「百合りん、ジュンのこと好きなん?」


「友達だしね。
別に恋愛感情とかじゃなくて、兄妹みたいな。」


ふうん、と真綾は言う。



「まぁ、ホストなんてね。」


と、あたしが言うと、彼女も笑った。


体を売って稼いでるあたし達のくせに、って感じだけれど。



「けど、香織は本気でハマってるみたいやなぁ。」


ふうっと息を吐いた真綾の言葉は、重い。


その沈黙がこの店に溶けて、だからやっぱり居心地が悪く感じてしまう。



「うちはこんな街で出会った人間に、本気にはなれへんけどね。」