ジュンを責めているつもりはない。


けれど、彼が黙ってしまうから、沈黙が重かった。



「正月休み、一緒にどっか行くか。」


ジュンは困ったように笑って言う。



「うちのばあちゃんが、百合に会いたいっていつもうるせぇの。」


「地元に戻れって?」


「家帰れとか言ってねぇじゃん。
ばあちゃんも賑やかな方が良いって言うし、旅行がてら泊まりに行かない?」


その提案に、正直揺らいでしまいそうになる。


ジュンのおばあちゃんには会ったことはないけれど、でもいつも話を聞く限り、あたたかい人なのだろうと思うから。


だから彼はいつも、忙しい合間を縫い、実家に帰るでもなくおばあちゃんに会いに行くのだろう。



「ごめん。」


けれど、一番に頭に浮かんだのは瑠衣のこと。


あの人が震えながら眠る姿を思えば、行くことは出来ない。



「そっか、残念。」


まるで振られたように、ジュンは笑う。


あたしに期待されたって、何も返せないのに。


だから優しい顔をしないでほしいと、いつも思う。



「でも、会いに行くくらいなら良いかもね。」


いたたまれずに言ってしまった言葉は、優しさだったのか、罪悪感だったのか。


それでもジュンが笑うから、あたしも笑っていた。


この人との関係もまた、何なのかはわからない。