「お兄ちゃんね、ジュンと帰るって言ったら電話の向こうで泣いちゃって。」


「ははっ、想像出来る。」


「別に実家に戻るとは言ってないのにね。」


「でもそれって喜ばれてるってことじゃん?」


あたし達ふたりは、これから一緒に地元に戻る。


もちろんまだ、家族とのわだかまりだってあるし、解決すべきことだって山ほどあるのだろうけど。


でも、もう逃げたくはないから。


ジュンと一緒なら、彼が言うように、きっと大丈夫だと思えてくるから不思議だった。



「ばあちゃんもさ、百合に会えるの嬉しくて、待ってるって言ってた。」


「うん。」


「だからさ、お前は自分で思うよりずっと、みんなに好かれてんだよ、きっと。」


くすぐったくなるような言葉。



「でも、あたしがお邪魔しちゃってホントに良いわけ?」


「そんなん気にすんなって。
つーかさ、お前はもっと周りに頼って良いんだっつの。」


地元に戻ると決めたものの、躊躇していた自分がいた。


そんな時、ジュンは俺と一緒にばあちゃんちで暮らそう、と言ってくれたのだ。


仰天するような提案だったけど、あまりにも彼が必死で言うから、あたしは何となく断りきれなくて、それを承諾してしまった。


だから、それも一因で、ジュンはオーシャンを辞めたのだけれど。



「何か変な狼に襲われないか不安。」


「おいおい、それって俺のことかよ!」


ジュンは口をすぼめ、



「俺はさ、百合が俺のこと好きって思ってくれるまで待ってるよ。」