「つか、早めに籍入れなきゃマズいよなぁ。」


あれ以来あたし達は、先のことに夢を馳せるような会話ばかり繰り返してきた。


例えば子供には何を習わせたいかとか、そんなことばかりで、ちっとも現実なんか見ていなかったんだ。



「瑠衣?」


通りに響いたのは、彼を呼ぶ女の声。


ふたり、振り返ると、そこには見覚えのある人が目を丸くして立っていた。


あの、忘れもしない、外国製のボディーソープの香りを漂わせる彼女。



「…ア、ミ…」


アミさんの存在に、無意識のうちに体が硬直した。


けれど彼女は気にもせず、怒った顔のまま、ヒールを鳴らしてこちらへと近づいてくる。



「瑠衣、ちょっとヒドイんじゃない?」


「何がだよ。」


「急にあたしと終わらせたいとか言うし。
しかもこの女、何なわけ?」


「関係ねぇだろ。」


刹那、彼女はキッと瑠衣を睨み付けた。



「関係ないって何よ!
何年アンタといると思ってんのよ、あたしのこと好きって言ってたじゃない!」


「そりゃ、金くれるヤツには言うっしょ。」


嘲笑を混じらせ、瑠衣は言う。



「お前もう、必要ねぇから。」