「ホントに産んで良いの?」


「ダメとか言うわけねぇじゃん。」


「結婚って意味、瑠衣ちゃんとわかって言ってる?」


「つか、お前より長く生きてるし、わけわかんねぇこと言うなよ。」


「嘘じゃなくて?」


「こんな嘘つくヤツいねぇだろ。」


「…マジ?」


「マジだっつってんじゃん。」


あたしの頓狂な問いにも、瑠衣は至って普通に返答していた。


挙句、疑り深いヤツだなぁ、なんて彼は肩をすくめ、ため息を混じらせてしまう始末だ。


けれどこれなら、シャブのことも、詩音さんのことも、もう過去として終わらせてくれるかもしれない。



「俺さぁ、お前や子供に何もしてやれねぇかもしれねぇけど、それでもちゃんと傍に居てやるから。」


瑠衣は言う。



「あったかい家族ほしいしさ。
百合とならそういうの、作れるかもな、って。」


「…瑠、衣…」


「だから、結婚しねぇ?」


ただ、涙ばかりが溢れてしまう。


こくこと頷くと、瑠衣は困ったように笑った後で、あたしを抱き締め、頬に口付けを添えてくれた。


優しい瑠衣が好きだった。


ずっと苦しくて、死んでしまいたかったあたし達の、束の間の幸せなひととき。


こんな一瞬が永遠であればと、ただ願っていたんだ。