「百合、とりあえず立てるか?
こんなとこ座ってちゃダメだし、あっちで話そう。」


それでも起き上がることさえ出来ずにると、瑠衣によって抱えられ、ベッドまで運ばれた。


そこに寝かされるあたしと、ベッドサイドに腰を降ろし、手を握って視線の高さを合わせてくれる彼。


零れる涙は頬を伝い、枕に沁み込む。



「何か実感なんてねぇし、よくわかんねぇけどさ。」


瑠衣の呟きが消える。



「百合は産むつもりなんだよな?」


確認するように問われた台詞に、こくりとだけ頷いた。


彼はあたしの手を握り締めたまま、首を傾け、目を細めて口元を上げる。



「じゃあ、結婚する?」


「…えっ…」


にわかには信じられない言葉だった。


ただそれは、とてつもなく現実的な話で、思考がショートしてしまいそうだ。


わたわたとしているあたしを見た瑠衣は、



「だって俺の子なのに、殺すことなんて出来ねぇしさ。
責任取るっつったら聞こえ悪いかもだけど、お前ひとりで産ませるのなんかもっと出来ねぇじゃん?」


「…えっ、ちょっ…」


「つか、お前がキョドるなって。」


だって、あたしと瑠衣が結婚するって?


子供を産むのなら当然の選択なのに、なのにそんな簡単なことすら考えていなかったあたしは、馬鹿なのだろうか。