瑠衣の部屋に帰り、あたしはその胸の中で声を上げて泣き続けた。


彼はやっぱり悲しそうな顔で、そんなあたしの頭を撫でてくれる。



「なぁ、泣いてばっかじゃわかんねぇよ。
病院行ったんだよな、何か言われたのか?」


しゃくり上げながら、あたしは瑠衣のシャツの裾を握り締めた。



「…子供っ…」


「え?」


「子供、出来てるの。」


涙ながらに見上げた彼の顔は、当然だけど、信じられない、と書いているかのよう。



「あたしのお腹の中には、瑠衣の子供がいるの!」


告げたのは、産もうと決めたから。


あたしはこの命を殺すことなんて出来ないし、それが瑠衣の生きる希望になってほしかったから。



「…だってアキトが帰って来てくれたみたいじゃんっ…」


泣き崩れるあたしを見た瑠衣は、顔を覆い、後ずさるように壁にもたれ掛かった。


彼が唯一求めていた、確固たる繋がり。


あれからずっと後悔の渦の中で生きてきたあたし達に注いだ、小さな、だけど輝く新しい命。



「…そん、な…」


「瑠衣はもう父親なんだよ!
だからっ…」


だからシャブに関わる全てから足を洗ってほしかったし、一緒にこの街から出てほしかった。


瑠衣は震える唇を噛み締めたまま、口を開くことはない。


答えを急かす一方で、聞きたくないと思っている自分がいる。


沈黙の中、ただ彼の言葉を待っていた。