途端に今までとは別の、恐怖という名の震えが体を駆け抜ける。


瑠衣は荒い呼吸のまま、手を震わせながらポンプに粉を入れていく。


目が血走っていた。


だから何かを考えるより先に、気付けばあたしは渾身の力でそれを払っていた。



「止めて!」


刹那、ころころと床に転がったポンプと、散らばった白い粉。



「どうしてこんなもんするのよ!
止めてよ、瑠衣まで死んじゃうよ!」


あたしは彼の体を揺する。



「お願いだからこんなことしないで!」


自分の体を大事にしろ、なんてあたしが言って良い台詞ではないのもわかってる。


瑠衣の弱さだって知っている。


けれど、シャブなんか打ったって現実から逃げられるはずはないんだ。



「じゃあどうしろってんだよ!
死んだって良いよ、なら百合が俺のこと殺してくれよ!」


叫び散らし、瑠衣はその場にうな垂れた。



「…俺もう、シャブ抜くこと出来ねぇよ…」


呟かれた台詞が宙を舞う。


瑠衣をここまで追い詰めてしまったのは、あたしなのかもしれない。


前よりももっと細くなった彼の震える体を見て、あたしもその場に崩れ落ちた。


もう、何もかもが砕けてしまったかのようだ。