あたしと瑠衣はまるで迷子になった子供のように、ふたり、手を繋いで歩いた。


どうやって帰ったのか、なんて覚えてないけど。


瑠衣は自室に入るなり虚ろな瞳のまま、吸い寄せられるようにチェストの一番上の引き出しに手を掛ける。


そこは、唯一あたしが触ったことのない場所。


いつも鍵が掛かっていて、絶対に開けるな、と彼に念を押されていたから。


明かりさえつけることはなく、真っ暗闇の中、街のネオンの輝きが淡く彼の横顔を照らしている。



「ねぇ、何やってんの?」


恐る恐る声を掛けてみるも、それは瑠衣の耳には入っていないかのよう。


彼はポケットからキーケースを取り出し、小さな鍵を穴に差す。


初めて開いているのを見た引き出し。


瑠衣はそこから何かを取り出すと、一心不乱に包みを開ける。


あたしは我が目を疑った。



「…嘘、だよね…?」


嘘だと思いたかった。


瑠衣が手にしているのは細く長い小さな注射器と、白い粉の入ったビニールのパケ。


覚醒剤だ。



「瑠衣?!」


制止しようとしたあたしを振り払い、彼は左手の人差し指にある絆創膏を取り捨てた。


どうして今まで気付かなかったのだろう。


モデルやスポーツ選手など、腕を見せなければならない人たちが指に注射をするという話は聞いたことがあったのに。


瑠衣はシャブを打ってたんだ。


しかも、あたしが知る限りでも、もうずっと前から。