瑠衣の絶望――苦しみや悲しみを、もう何度この目にしただろう。


けれどアキトは死んでしまった。


例えば詩音さんの時のように、いなくなっただけならばまだ、小さな希望に縋れただろうに。


だから瑠衣は、あき、あき、と叫び続けた。


呼んだってもう、帰ってくることはないのに、それでもまだ、彼は声を絞ることを止めはしない。



「あき、痛かったろ?
ごめんな、苦しかったよな?」


「瑠衣、もう止めてよ!」


震える体を抱き締めた。


こちらへと持ち上げられた瞳は、子供のようで、けれどそこには絶望が映る。



「…百合、俺っ…」


瑠衣はあたしに縋るように手を伸ばし、嗚咽を混じらせる。



「…俺があきのこと殺したんだ。
俺が死ねって言ったから、コイツはっ…」


「違うよ、瑠衣!」


遮るように、あたしは言った。



「瑠衣の所為じゃないよ!
事故だって、だから瑠衣が悪いんじゃないよ!」


だからこれ以上そうやって、自分を責めないでほしい。


瑠衣はまた、崩れるようにあたしの肩口へと顔をうずめてしまう。



「アキト、きっと疲れたから眠ってるんだよ。
だから静かにしてあげなきゃ可哀想だよ。」


やっと言えた言葉は、何の救いになっただろう。


けれども僅かに瑠衣の頭が上下して、あたし達は悲しみを堪えた。


月も光も届かない場所だった。