「…アキ、ト…」


どうして手紙なんか残すのよ。


それはもう、涙で霞んでしまい、けれど溢れ出るものを止める術さえないのだから。


アキトからの、最初で最後のラブレター。


でも、そこに記されていたのは、瑠衣のことばかりじゃないか。



「…ねぇ、アキトがっ…」


言葉にならない。


けれど、代わりに見上げた彼もまた、泣いていた。


瑠衣の涙なんて初めてだった。



「ふざけんなよ、馬鹿が!
何がお兄ちゃんだよ、謝ってんじゃねぇぞ!」


そう言いながらも、瑠衣の声は震えていた。


あたし達が握り締める手紙の端はすでにくしゃくしゃになっていて、けれどその分だけ悔しさが滲む。



「…何で死んだんだよっ…」


吐き出された言葉が暗闇に溶ける。


警察の人たちはまた顔を見合わせ、静かにその場を立ち去った。


あたしと瑠衣は泣き崩れることしか出来ない。


現実を受け止めた分だけ苦しくて、やるせなくて、後悔ばかりで嫌になる。


失った代償は、あまりにも大きなものだった。