家族だとか、事後処理だとか、単語ばかりが取り留めもなく宙を舞う。


まるでアキトが本当に死んでしまったかのようだ。


沈黙の中、向こうから靴音が聞こえた。


あたしと瑠衣はハッとして顔を上げたが、こちらへ歩いて来るのはアキトではなく、知らない男。


多分この人もまた、警察の人なのだろう、彼らの傍までやって来て、耳打ちと共に何かを手渡していた。



「百合さん、というのはあなたですか?」


聞いてきた男は、



「これね、車内から見つかったらしいんですが。」


そう言ってあたしに渡されたのは、何の変哲もない封筒だった。


百合へ、とだけ書かれたそれが手紙であることは、すぐにわかる。



「アキトの字だ!」


瑠衣は焦ったように言った。



「念のために中は読ませてもらいましたが、どうぞ。」


それだけの言葉を残し、今しがたやって来たばかりの男は、きびすを返す。


再び遠くなっていく靴音。


あたしは震える手でそれを開け、中身を取り出した。