茫然自失のままに立ち尽くす廊下は、静かすぎて音のひとつもない。
だからまるでテレビドラマの中にでも迷い込んでしまったかのようで、これが現実だなんて、とても思えなかった。
「免許証と車の製造番号からも確認を取りましたが。
ご遺体は池澤アキトさんで間違いはなかったですね?」
確認するように、男は問うてくる。
瑠衣はそれでも首を横に振り、違う、違う、と繰り返していた。
けれどもその反応は肯定にしか受け取られず、警察の人たちは手を焼くように顔を見合わせ、ため息を混じらせる。
よくあるただの事故死のうちのひとつ、くらいにしか考えられていないのだろう。
「では一応、車の中から見つかった遺品もご確認願えますか?」
気だるそうに言った彼は、おい、と後ろの男に声を掛けた。
若い方の男は手に持っていた紙袋の中身を取り出すと、そのひとつひとつはビニールのパッケージに包まれている。
全てには、真っ赤な血のりがこびり付いていた。
「…瑠衣、これっ…」
財布、携帯、煙草、と見せられた後、ブラックチタンのジッポ。
ネックレスも、指輪も、全てアキトが昨日つけていたものと全く同じだったのだ。
瑠衣はそれを見ようとはせず、顔を覆って肩を震わせる。
「アキトじゃねぇっつってんだろ!」
信じたくはない、と頑なに拒んでいるかのような、彼の姿。
その痛々しいまでの苦しさが、沈黙の帳の中で重くのしかかる。
ただ、嘘であればと願うばかりだ。
だからまるでテレビドラマの中にでも迷い込んでしまったかのようで、これが現実だなんて、とても思えなかった。
「免許証と車の製造番号からも確認を取りましたが。
ご遺体は池澤アキトさんで間違いはなかったですね?」
確認するように、男は問うてくる。
瑠衣はそれでも首を横に振り、違う、違う、と繰り返していた。
けれどもその反応は肯定にしか受け取られず、警察の人たちは手を焼くように顔を見合わせ、ため息を混じらせる。
よくあるただの事故死のうちのひとつ、くらいにしか考えられていないのだろう。
「では一応、車の中から見つかった遺品もご確認願えますか?」
気だるそうに言った彼は、おい、と後ろの男に声を掛けた。
若い方の男は手に持っていた紙袋の中身を取り出すと、そのひとつひとつはビニールのパッケージに包まれている。
全てには、真っ赤な血のりがこびり付いていた。
「…瑠衣、これっ…」
財布、携帯、煙草、と見せられた後、ブラックチタンのジッポ。
ネックレスも、指輪も、全てアキトが昨日つけていたものと全く同じだったのだ。
瑠衣はそれを見ようとはせず、顔を覆って肩を震わせる。
「アキトじゃねぇっつってんだろ!」
信じたくはない、と頑なに拒んでいるかのような、彼の姿。
その痛々しいまでの苦しさが、沈黙の帳の中で重くのしかかる。
ただ、嘘であればと願うばかりだ。