病院の地下にある、遺体安置室。


ほの暗くて、夏なのに寒ささえも感じる場所で、あたしと瑠衣は目の前の光景を受け入れることさえ出来なかった。


だってそこには、人の色をしていないアキトが眠っていたから。



「救急隊が到着した時にはもう、息はなかったそうです。」


そう言ったのは、警察だと名乗った人たちのうちのひとりだった。



「まだ調べている段階ですが、ボールを追いかけようとして飛び出して来た子供を避けようとしての、自損事故と視ています。」


あたしと瑠衣は、震えが止まらなかった。


そうだよ、昨日会ったはずじゃない。


いくらあんなことがあって、瑠衣にもう二度と現れるな、なんて言われたからって、死ぬはずないじゃない。


目の前にいるアキトの姿をしたモノは、赤黒い色をしていて、とてもあの綺麗な顔の彼と同じだとは思えない。



「…俺の、所為だっ…」


瑠衣はパニックになったように後ずさる。



「なぁ、こんなの嘘だよな?
アキトが死ぬわけねぇじゃん、俺より先にこんなんなるはずねぇだろ!」


「瑠衣!」


嘘だよな、嘘だよな、と繰り返す彼。


さすがに見かねたらしい警察の人が、一旦出ましょう、とあたし達を外へと連れ出した。


悪い夢でも見ているかのようだ。