「ここにいて。」
それだけの言葉を残して部屋を出た瑠衣は、それから丸一日、帰ってくることはなかった。
だからひとりで考える時間なんて山ほどあった。
いや、それよりずっと前からもう、答えなんて出ていたのかもしれないけれど。
「瑠衣、話があるの。」
帰ってきた彼にそう切り出した。
瑠衣もまた、わかっていたのだろう、あぁ、と呟く。
その体からは、忘れかけていた外国製のボディーソープの香りが香っている。
きっと今の今まで、亜美とかいう女のところにいたのだろうけど。
「俺もさ、話あるから。」
改まったようにこんな会話をしたことなんて、思い返してみても、今まで一度してなかったはずだ。
あんなにも長い時間、一緒に過ごしたはずなのに、と思うと笑えてくるけれど。
「あのさ、俺…」
瑠衣が言い掛けたその瞬間、彼のポケットの中で携帯が、けたたましい着信の音を響かせた。
いつもと同じ音なはずなのに、何故かそれは急かすように鳴り続ける。
ドクドクと血流が逆に昇るような異様な感覚に、嫌な予感に支配され、背筋に汗が伝った。
瑠衣は携帯を取り出すと、ディスプレイを見て一度眉を寄せ、いぶかしげにそれの通話ボタンを押す。
「はい、はい……え?」
そう言ったきり、彼はただ呆然と機械を耳に当てたままに立ち尽くしていた。
やがて携帯は、瑠衣の手を滑るようにガコッ、と床に落ちる。
彼は体を震わせた。
「死んだ、アキト、事故。」
それだけの言葉を残して部屋を出た瑠衣は、それから丸一日、帰ってくることはなかった。
だからひとりで考える時間なんて山ほどあった。
いや、それよりずっと前からもう、答えなんて出ていたのかもしれないけれど。
「瑠衣、話があるの。」
帰ってきた彼にそう切り出した。
瑠衣もまた、わかっていたのだろう、あぁ、と呟く。
その体からは、忘れかけていた外国製のボディーソープの香りが香っている。
きっと今の今まで、亜美とかいう女のところにいたのだろうけど。
「俺もさ、話あるから。」
改まったようにこんな会話をしたことなんて、思い返してみても、今まで一度してなかったはずだ。
あんなにも長い時間、一緒に過ごしたはずなのに、と思うと笑えてくるけれど。
「あのさ、俺…」
瑠衣が言い掛けたその瞬間、彼のポケットの中で携帯が、けたたましい着信の音を響かせた。
いつもと同じ音なはずなのに、何故かそれは急かすように鳴り続ける。
ドクドクと血流が逆に昇るような異様な感覚に、嫌な予感に支配され、背筋に汗が伝った。
瑠衣は携帯を取り出すと、ディスプレイを見て一度眉を寄せ、いぶかしげにそれの通話ボタンを押す。
「はい、はい……え?」
そう言ったきり、彼はただ呆然と機械を耳に当てたままに立ち尽くしていた。
やがて携帯は、瑠衣の手を滑るようにガコッ、と床に落ちる。
彼は体を震わせた。
「死んだ、アキト、事故。」