瑠衣とあたしは、どうしてこんな風にしてしか、互いの存在を確認出来ないのだろうか。


右手の小指には、今も外すことなく同じものが輝いているはずなのに。


なのにもう、馴染み過ぎた分だけ大切に出来なくなっているんだ。


指輪も、相手も、自分自身でさえも。



「寒い?」


震えていたのは、水の冷たさだけの所為ではなかったろう。


けれども瑠衣は、あたしにバスタオルを掛けてくれるだけで、決していつものように、ごめんな、なんてことは言わなかった。


まぁ、謝られたって同じだけれど。


瑠衣はあたしをバスルームに残したままに、背を向けた。


雫はポタポタと髪の毛を伝い、やっぱり涙と混じって落ちていく。





苦しいよ、もう。





見つめた先にあったのは、剃刀だった。


けれどもそれを掴もうとしていた手を止めたのは、頭に浮かんだ真綾の顔。


その途端に、死ぬことすらも出来なくなった気がして、また涙が溢れた。


嗚咽を混じらせながらあたしは、声にならない声を噛み殺すことしか出来ない。


今更瑠衣が、初めて会ったあの日にどんなつもりであたしに声を掛けてきたのかなんてことを聞く気はない。


けれど、あたしの存在がこのふたりを狂わせているのはわかった。


消えてしまいたくなるよ。