居場所がないのも、全てを否定されるのも、もう慣れているはずなのに。


徐々に落ち着き始めた呼吸を整えると、彼は不安そうな顔であたしを見る。



「とりあえず、病院…」


「良いの、大丈夫だから。」


でも、と言いたげな、瑠衣の瞳。



「こんなのいつものことだし。」


壁に寄り掛かると、その冷たさに救われる。



「ストレス性のものらしいから、大したことないよ。」


「けど、それって放っといたら胃潰瘍とかになるやつじゃねぇの?」


「そんな難しいこと知らないけど。
別にそのうち治まるんだし、気にする必要ないじゃん。」


病院に行って、それで一体何になるというのか。


ただ、こんな痛みに耐えるくらいなら、早く死んでしまいたいと思う。



「あたし、昔からこうなんだよね。」


ずっと抑圧された中で生きてきた。


だから逃げるようにこの街に来たはずなのに、なのにまだこの痛みに苦しめられるのか。



「百合。」


瑠衣があたしの名前を呼ぶ。


抱き締められた場所から溶け出してくれれば良いのに。


どうしていつも、あたしに向け、そんなにも泣きそうな瞳を揺らすのだろう。


同情なんかされたくないと、いつか真綾が言っていた言葉を思い出した。


可哀想なのは、一体誰か。