自分の部屋にどうやって戻ったのかを、思い出せなかった。


けれどここでも、相変わらず寂しさを隠すようにこうこうと電気がつけられていて、彼はソファーでひとり、ビールを流している。


もうすでに、あたしの部屋でさえこの人のもののよう。


目が合うと、手招かれた。



「どした?」


けれども首を横に振り、瑠衣の招きには応じず風呂場に向かう。


すると彼はあたしの反応に満足しなかったのか、眉を寄せて立ち上がった。



「百合!」


制止するように掴まれた腕。


あたしは今、一体どんな顔をしているだろう。


吐きそうなのはいつものことで、胃を握り潰されるような感覚ももう、慣れたとばかり思っていたけれど。


きりきりとそれは痛みを放ち始め、思わず顔を歪めてしまう。



「おい、百合?」


脂汗が伝い始め、意識が混濁していく。


浅く何度も呼吸を繰り返せば、立ってさえいられなくなった。


助けを求めるように頼りない腕を伸ばすと、抱き締められたのか、縋りついたのかがわからないけど。


痛みからか生理的な涙が溢れ、意味もなく首を振り続けた。


頭の中には色んな事がぐるぐると回っていて、嗚咽ばかり混じらせながらもあたしは、泣き続けることしか出来ない。


瑠衣の胸の中にいても、震えは止まらなかった。