彼はそれでも表情を動かすことさえない。


互いに似ているのだと、心のどこかでわかっているからこそ、わざわざ言葉にするまでもなかったのかもしれないけれど。


街はすっかりクリスマスムードに包まれていて、そんなものに吐き気がした。


幸せそうな人々の顔は、どれも嘘臭くて堪らない。



「香織のこと、どうすんの?」


切り出したのはあたしだった。


彼女は今日も結局、仕事に来なかったようだ。



「アンタが一発ヤッて上手いこと言ってやれば、少しは真面目になるんじゃない?」


「それは俺が決めることじゃないよ。」


けど、とジローは言う。



「香織は多分、切られるだろうね。」


冷酷なまでに冷たい言葉を、彼は呟いた。


繋ぐ必要すらない、ということだろう。



「理由、百合ならわかるだろ?」


シンナーのことだ。


言葉にされるまでもなく、ため息混じりにあたしは、煙草の煙を吐き出した。


ジローや詩音さんまでもそのことに気付いているのなら、もう擁護は出来ないだろうから。


冷たい人間なのは、一体誰なのか。