浩之の唇が、笑った。
 
彼は一瞬の後、表情を恐怖に引き攣らせて、震え出しながらゆっくりと振り返った。
 
彼が、後ろに立っているエイジュの姿を見たかどうかは分からない。
 
静かな音が、彼を貫こうとしたのと、浩之が“殺さないでくれ!!”と叫んだのは、ど
ちらが早かったのか分からなかった。

彼は、浩之の方に横向きに倒れてきた。

遅かったか。

浩之は思わず、彼から目を背けた。

エイジュが近付いてくる足音がして、顔を上げた。

彼のそばにしゃがみこんで、彼の体を探っているのが見える。