昔、黙って持ち出して読んだ、英樹の本と同じ物だった。
 
浩之は、無心でその本に手を伸ばした。
 
痛み具合や汚れ方に見覚えがある気がする。
 
気のせいだ、そんなハズ
 
そう思いたいくせに、どこかで証拠を探したかったのかも知れない。
 
無意識のまま、浩之はページをバラバラと、めくっていた。

何事も起こらなかったことで、浩之は我に返り、そのとき、後ろに誰かの気配を感じた。  
振り返るより早く、その誰かの腕が背後から浩之に絡みついてきた。

胸に巻きついた片手で締め上げられ、抵抗すると、もう片方の手が、浩之の首元にナイフを突きつけてきた。