「手を。早く」
 
壁の上にしゃがんだエイジュが、浩之に手を差し伸べて来た。
 
浩之はエイジュの表情を覗き込んだ。

何の感情も読めそうに無い無表情が、こっちを見ている。

浩之は手を伸ばして、エイジュの手を掴んだ。
 
しっかりした力が、体を引っ張りあげようとしている。

浩之はふと、自分が完全に力を抜いていることに気付いた。

苦笑して、半分は自力でエイジュの足元に手をかけて、壁をよじ登った。