彼女は、自分の体のダメージを調べもせずに、歩き出した。
 
浩之の傷が、じわじわと痛み出す。
 
彼女は、痛くないのかな。

エイジュは何も感じてない様子で、芝生に覆われた地面を大股で横切って行く。

そして、敷地を覆う塀の目の前で、立ち止まった。

壁は、二メートル程の高さにそびえ立っている。
 
エイジュは黙ってその壁を見上げ、数歩後ずさりをした。

そうして、軽く助走をつけて、壁に飛び上がる。

エイジュは高く舞い上がって、壁の上に、悠々と着地しそうに思えた。

が、実際は、エイジュは壁の上部に手をかけると、壁を蹴って飛び上がった。