マサさんが部屋を出て行こうとしない。


何も言われても聞く気はない。


「真子さん食べながらでいいんで、俺の話を聞いて下さい。」


仕方なく、頷いた。


「若は真子さんを迎えに行く為に、極道から足をあらうつもりでいました。でも二年前弟の亮平君が亡くなり、若は亮平君の為に朝田組を継ぐことを決めたんです。」


そうだったんだ。


銀ちゃんは優しい人だから、弟さんの思いをついだんだと思う。


「若が荒れてた時は、確かに女遊びは酷かった。でも若は真子さんの為に変わったんです。若には真子さんが絶対必要です。」


銀ちゃんに私が本当に必要なのだろうか。


私は銀ちゃんといていいの。


銀ちゃんと幸せになっていいのだろうか。


銀ちゃんがどんな思いで極道の世界に入ったと思うと、胸が張り裂けそうだった。


銀ちゃんは私の為に変わろうとしてくれたのだ。


私の為に朝田銀平は沢山の思いを抱え戦っているのに。


銀ちゃんを信じなきゃ駄目じゃない。


こんなの私らしくないし。


私は銀ちゃんと離れられない、運命だとしたら。


この運命に逆らう事など出来なかった。