テーブルの一点を見つめて、部長は黙ってしまった。

すると、ふと、店内に優しいメロディが流れた。


「アラジン……?」


「ホールニューワールドだ」 


優しい、優しい夢のようなメロディ。


ドリーミーな世界。


しばし、私たちは聴きほれていた。


「さやかが、好きだった曲だ」


部長が、ぽつりとつぶやいた。


「オルゴール、プレゼントしたな。あいつに」


やがて、音楽は流れ去った。


「行きましょう、部長。さやかさんが待ってます」


私は部長の腕をひっぱった。


「うん」


しっかりとした目で部長は頷いた。