私たちは、部長の故郷へと降り立った。


さやかさんに……さやかさんのお墓に会いに行く前に、私たちはファミレスに入った。


私は紅茶、部長はコーヒーを頼み、普段は吸わないタバコを手にしている。


よっぽど緊張しているのか、そのタバコを持つ手が震えてる。


普段は、ひょうひょうとしている彼でも、緊張するんだ。


「――さやかはね、トランペット吹いてたんだ」


緊張を払拭するかのように、部長は静かに話し始めた。


「部活で一緒だったんですか?」


「うん。幼稚園の鼓笛隊から一緒。家も近所でね。高校も一緒。部活も一緒」


「いつも……一緒だったんですね」


「あぁ」


部長はタバコに火をつけたものの、灰皿の上に置いたままだ。


「そうだね、いつも一緒だった。だから、さやかがいなくなって、片腕を失ったようだった」


「――」


「大学もね、一緒にこっちの受けたんだ。あいつは教育大だったけれど」


ああ、だから――。


部長のアパートは私たちの大学から遠くて、教育大に近いところに住んでたんだ。


「……梅が綺麗に咲いててさ。ふたりしてそれに見とれてたんだ。そこに、居眠りの車が……――」


部長は表情ひとつ変えずに話してくれた。


「卒業式の後だったんだ。さっきまで傍にいたんだ、それなのに――」