うっうっ、と嗚咽しながら部長は言う。


「そうしたら、今の部長のように、さやかさんは悲しみますよ。誰にも止めることのない、事故だったんです」


私の言葉を聞いているのかいないのか、部長はとめどなく涙を流した。


私はぎゅっと先輩を抱いた。


恋人の、死――か。


重い過去だ、な。


いつも人前ではひょうひょうとしている部長。


けれども、いつも心の中には、さやかさんへのやり切れない思いでいっぱいだったんだ。


と、突然私を振り切ると、部長は床に置いていた飲みかけのビール缶を、壁に投げつけた。


中身が飛び散り、壁にしみがついた。


投げられた缶は、変形し、床に転がった。


そして部長は、サッと立つと、部屋を出て行ってしまった。


「部長!」


場所をキッチンへ移すと、食器棚に入っていたお皿をとりだし、次々と地面に叩きつけた。


「部長! 優人さん! ダメです!」


私は必死に部長を止めようとした。


けれど……。


ガッシャーン!


私の足元でお皿が割れた。

「……つっ」