いつまでも腫れ物を触るような扱いじゃいけない。
音々先輩にでさえ、部長はその過去を話していない。

すると部長は、ビール缶を床に置き、両腕を抱え、体育座りをした。


「あいつは――……」


部長は口を開いた、だけど、そう言うとしばらく口をつぐんでしまった。


沈黙は、たっぷり10分はあったかに思う。


私は、じっと待っていた。

「あいつは……さやかは、死んだよ」


「――」


部長の発した言葉は、宙にぽっかりと浮かんだ。


死――。


そして、またしばらくの沈黙があった。


私も、部長も、その間微動だにしなかった。


「部活帰りで。一緒に歩いてたんだ。……たまたま車道側を歩いていたさやかに、居眠り運転の車が……」

そこまで言うと、部長は両手で顔を覆った。


「俺が、車道側を歩いていれば――!!」


彼は肩を震わせた。


私は、とっさに部長を抱きしめた。


「部長のせいじゃないです。部長は悪くないんです。事故だったんですよ」


「いや、俺がさやかの身代わりになればよかったんだ」