すると、少し間をおいて、音々先輩は話し始めた。


『優人ね、大学に入ってから一度も彼女つくらなかったの。特定の女の子と仲良くすることもなくて――』

確かに、私がこのサークルに入ってからの約1年半。部長の浮いた話なんて聞いたことがなかった。


「はい」


『だから、嬉しいの、私。優人がもえぎちゃんと仲良くしているみたいで。……だけど』


部長と音々先輩で“クロス☆音々”というサークルを立ち上げたんだ。


だから、先輩方は昔からお互いのことをよく知っていると思う。


「はい」


『だけどね、優人、本当は未だに……昔のことをひきずってるのね。前に進めないのはきっと、それが原因だと思うの。もえぎちゃんとも、ちゃんとつきあいしてないでしょう』


「つきあうもなにも、部長は私のこと何とも思ってないですよ」


『うん。だけど、優人はあなたに好意を持ってるわよ。間違いなく。――ねえ、優人の心の闇……に気づいてる?』


心の闇……。


仲良くなる前は、時に切なげな、虚無な表情をする部長に気がついていた。


最近は色んな部長を見ている。


部屋の惨状、お酒を飲んでは暴れる、そして夕べは口に出して泣いた“さやか”という名前。


音々先輩も、部長のウラの性格に気づいていたんだ……。