“幸せになってよ”という聖二の言葉。


私は、部長といて、幸せなのだろうか。


彼女になりたいとか、望んでいるのだろうか。


このサークルに入って1年半、ずっと部長のことは気になっていた。


けれども、それは彼の哀愁をどこかで感じ取っていただけであって、それを恋心とよぶのにはふさわしいのだろうか。


遠くから部長のことをずっと見てきた。


そんな私を、聖二はずっと見ていてくれたんだね。


――びっくりした。


今頃になって、胸がどきどきし始めた。


突然の告白。


聖二が私のことを……なんて、ちっとも気づいてなかったよ。


結局、部長のことしか見ていなかったってことなのかな。


私はそう、あたまの中でぐるぐると考えながら、携帯を取り出した。


『着信 焙 音々』


音々先輩だ。何だろう。


「はい、もえぎです」


『もえぎちゃん? 今、大丈夫?』


鈴の鳴るようなかわいらしい声だ。


「はい」


『優人と最近仲良くしてるみたいで、それで言っておきたいことがあるの』


優人、とは部長のことだ。

もしかして、音々先輩は部長のことが好きで、それで私に宣戦布告しようとして電話よこしたのかしら。


「あ、はい……」


私はやや緊張気味に返事をした。