「なんででしょうねぇ」


「俺が誘っているからだな」


部長は自分で答えを出した。


「なんだか、なぁ」


誰もいない夜道。コンビニまで真っ直ぐ300メートル。


部長はさっきからぽつりぽつりとと、言葉を夜のしじまに落としていっている。

「あははっ。なんだかなぁ、って、なんですか」


「いや、君と……もえぎちゃんと、こういう飲み仲間になるとはね」


「だから、部長が先に私を誘ったんじゃないんですか」


「酔っ払って絡んできたのは、もえぎちゃんが先だよぉ」


「でしたっけ?」


「まあ、いいさ」


部長はそういうと、片腕をぐるんぐるんと大きく回した。まるで子どもみたい。

そんなこんなでブラブラとアパートに戻ってくると、私はまた牛スジを温めなおした。


ふたりで赤ワイン2本買ってきた。


ビールから、今度はワインで乾杯。


……したところまでは覚えている。


あとの記憶はぷっつりと途絶えてしまった。


私は、眠ってしまったようだった。


目を覚ますと、ゴン……ゴンッ……という鈍い音がした。


正確にいうと、その鈍い音で何かを察知して目が覚めたと言うのかもしれない。

ビリビリに破かれたカーテンからは、ほのかに明るかった。夜明けが近いのだろう。


部屋の明かりは煌々とついていた。


――だから、はっきりと、見えた。


東雲部長は、壁に、自分のあたまを打ちつけていた。

「――!! 部長!」