「もえぎちゃーん。朝ですよー」


んー……誰?


私、一人暮らしだから、起こしてくれる人なんていないはず――……。


ぱち。


私は目を開けた。


「――わっ。部長」


部長が、私の顔を覗き込んでいた。


慌てて私は上半身を起こした。


ああ、昨日、部長の家に来たんだっけ……。


洗濯のいい香りのするタオルケットが身体にかけられていた。

あたまの下には、枕も。


「あっ、すみません。図々しくも泊まっちゃって」


「なんもなんも」


東雲部長はシャワーを浴びた後らしく、せっけんのいい香りをたたせていた。


茶色で、襟元だけが白いシャツに着替えていた。


「ああ、飲みすぎた……」

私はそう呟きながらタオルケットをたたんだ。


「具合悪い?」


「吐き気……頭痛……」


「じゃ、今日は休んでな。練習休んでいいから」


「だけど、迷惑かけるんじゃ……」


「部長が言ってるからいいの」


そう言って、ぽん、と私のあたまを叩いた。


――こころの中に、花が咲く。


「床で寝ると、肩凝るだろ。ロフトで寝てな」


「すみません……じきに、帰りますから」


「ああ、好きにしていいさ。ずっといてもいい」


「すみません」