まず先に目が行ったのは、カーテンだった。


きれいなブルーのカーテンなのに。


縦にいくつもの亀裂が入っていて、扇風機の吹流しのようにビリビリに破られていた。


白い壁には水脈の跡。


近寄ってみると、かすかにお酒の匂いがした。


ビールやら日本酒やらを壁に投げつけたみたい。


床のカーペットは、これまたお酒のシミや、毛が固まっている部分もあった。


それから、床に直に置いてあるテレビの画面にも、ヒビが入っていた。


本棚の本とか、テーブルの周りとかは片付いているのがアンバランス。


「部長……」


「暴れてるって、こういうこと」


部長はしれっと言って、カーペットに座り、コンビニ袋から、おつまみであるえだまめとポテトサラダを出し、ビールのプルタブを開けた。


「えだまめ、好きなんですね」


「ああ、健康によさそうだろ。――座って。君も飲むだろ」


「ああ、……はい」


私は、この悲しみ溢れた部屋について、何も言わなかったけれど。


ああ、私。


ずっとこのひとの傍についていてあげないといけない。


そんな、傲慢な、ある種の母性本能を覚えた。


私は言われた通りに座って、部長から梅酒をもらった。


「明日から、夏休みの練習あるじゃないですか」


「ん」


部長は、えだまめをつまみ、また豆の感触を手で味わっているようだった。


――練習あるのに、こんなに飲んでて起きられるんですか、と言おうとしたけれどやめた。


部屋のこの惨状……。