「――暴れるよ」


東雲部長は、またさっきの鋭い目つきになり、口元だけに笑みをたたえた。


――ゾッ。


東雲部長……。


酔っているからだろうか。

それとも、ふたりきりだからだろうか。


初めて見せる、部長の別の顔……。


部長は私からスッと離れると、すたすたと近くのコンビニに入って行った。


私も慌てて後をついていく。


なんか、なんか心配。


部長は買い物カゴを掲げ、おつまみやらビールやらを買い込んでいる。


「君も、飲むだろ」


「あ、少しなら」


「少しなんて言わないでさ」


言動が荒い。


これが、部長の本当の姿なの?


彼は会計を終えると、両手に大きな袋を引っ提げ、ずかずかと店を出た。


そして、道でタクシーを拾い、“おいでよ”と私を誘った。


私は、嬉しさ半分、とまどい半分だった。


部長とふたりきりなのは、初めてだ。


私はタクシーの中、部長の隣に座っていることが信じられなかった。


「俺ん家ビミョーに遠いんだよね。学校までチャリで10分かかる」


「一人暮らしでしたよね。部長、自炊とかしてるんですか?」


「料理はできるけど、してないな」


真っ直ぐ前を向いたまま部長は言う。


「外食ばかりですか」


「んにゃ。夜、酒飲んで、つまみ食べるくらいかな」

つい、と鼻とあごを上にあげ、彼は答えた。