私の言葉に、部長は鼻とあごをつん、と上に向けた。

何かを考えているようだ。

「帰り、ちょっと、話そ」

その部長の発言に、胸がぽっと熱くなった。


部長と私、実は一対一で話すなんて滅多にないことだった。


こうして、飲みの席でも、いつも部長は誰かに囲まれていて遠い存在だったんだ。


だけど、帰り、ちょっと、話そ。だって。


嬉しー。


なんて浸っていると。


来たよ。台風の目が。


宴会部長、睦緒軍団。


「ほら、部長っ。飲まないと大きくなれないですよぉ」


と、睦緒は言って、部長の前にビール瓶をどん、と置いた。


そして一緒に聖二と若宮くんも戻ってきた。


「部長、部長も脱いで脱いで」


「こら、睦緒。アルハラでパワハラ」


と、東雲部長はぴしゃりと言ってのけた。


「パワハラはないっすよ。部長より下っ端ですから、俺」


「宴会部長だろ、睦緒。だからパワハラ」


「まあいいじゃないですか」


さっきからずっと上半身裸の睦緒。


身体には赤い手形がいっぱいついていた。


どうせ部員たちに“かかってこい! ハッ!”なんつって筋肉張ってビンタくらってきたんでしょ。


……ってか、いつの間にか聖二も裸じゃん。


色白――、華奢。薄っぺらい胸。


楽器吹きって体力要るんだけどなぁ。なんだこのもやしっ子は。


若宮くんはさすがに脱ぐのはためらわれたのか、シャツの袖をまくって肩を見せているくらいだ。


「ほらほら、東雲部長、飲んで、脱いで!」