――眉が垂れている。


そう。部長はたまにそんな顔を見せる。


刹那な、切なげな表情。


ほんの少し、小首を傾げて、口唇を真一文字に結んで。


こころ、ここにあらず――。


部長、何を考えているの?

部長、何を思っているの?

私がなぜか部長に惹かれるのは、きっと時折見せるその表情のせい。


集団の中にいる時も、部長はごくたまにそんなノスタルジックな表情を浮かべているのに気がついたのは、いつからだろう。


入部したての頃からだったような気もするし。


ごく最近になってからのことのような気もする。


けれど。


私、東雲部長に対して、どこまで踏み込んでいいか解らない。


だって、東雲先輩は部長だし、私より2つも年上だし。


手の届かない存在――。


「――なんだ、もえぎちゃん。みんなのいるところに行かないのか」


どうやら部長はこっちの世界に戻ってきたみたい。


「もえぎちゃん、いつも騒がしいのに」


「いつもじゃありませんよ。おとなしい一面だってあります」


すると部長はカカカと笑って。


「そうか。おとなしいか。そりゃ、いいもん見れた」 

そう言ってビールを口に運んだ。


東雲部長は酔っているのか、あたまが左右にゆらゆら揺れている。


「もえぎちゃん」


「あ、はい」


「もえぎちゃんは……つきあわないの?」


「は、はい?」


「聖二と、つきあわないの?」