ベルカント城奪還に成功してから約二週間が過ぎた日。一通の手紙が届いた。
　「エレジー様。陛下からの返事が届きましたぞ。」白髪に白髭の老将事ヤースが腰まで届く程の長い赤髪の女性事エレジーの所へと走りながら声を張り上げていた。
　「ほう。珍しいな。あの堕落っ子が返事を出すなんて。」エレジーが手を出して、ジェスチャーで貸せとアピールしていた。ヤースは、気付かれないように溜め息をつき手渡した。エレジーは左から右へと目を動かしていた。
　「何て事だ…。あれが前に出てくるのか。奴が来る前にすべて片付けるぞ！」
　「エレジー様、陛下に対して奴呼ばわりはなりませんぞ。」
　「今いないのにいちいち陛下、陛下、陛下〜何て言う必要もなかろう。」
　「しかし…。」
　「それに、奴は私に対して強く言えないから平気だ。もし何か言ってきたら、表面上だけでも謝罪しておけばよい。」
　「ですが…。」
　「どうした？いつもの元気がないな。病でも患ったか？私にうつすなよ。」
　「病は患ってはおりません。」
　「じゃあ、どうしたんだ？はっきりしろ！」
　「まぁまぁ。あまりダン卿を責めなさんな、リフレント卿。ご無沙汰ですな。」
　「これはこれは陛下ご無沙汰しております。いつこちらにお着きになられましたか？」
　「ついさっきだよ。ちょうどダン卿がいたので道案内を頼んだんだよ。」エレジーは、一瞬ヤースを睨みすぐにタガールの方へ目線を移した。
　「いかがでしたかな？このベルカント城は。」
　「いやはや。以前着たときと比べて道が複雑になりましたな。それにまだ一部分のようだけれど、強度が増してるし、武装も大分替わりましたな。」エレジーは内心毒づきながら別の事を言った。
　「以前に比べて補強するのは当然です。二度と落とされることのないように！」
　「そのためにも頑張ってくれ。」
　「で、本題は何なんだ？タガール坊。私は回りくどい事は嫌いだと覚えているよな？」
　「あはは。そんなつもりなかったんだけどな。しっかし懐かしい呼び方だな〜。…てっきり忘れているものと思ってたんだけどなぁ。おてんばエレジー。」
　「…お前も忘れていないようだな。良い心掛けだ。」
　「そりゃ〜…忘れられないよ。では、本題に入ろうか？これ以上脱線したら悪いからね！」