「当たり前だ!南門から入って正面にあんだからな!無駄口言ってる暇があるのならさっさと行け!」馬から降り一階の大広間に入った。そこは、部屋の中央に円形のカウンターがあった。敵の気配が全くなかった。
 「一気に行くぞ!」全員剣を抜いた。シャッ、ガチャ、スー、ジャキ…ガキッ。金属同士がぶつかった鈍い音が部屋中に響いた。そして一つの影が少し離れた所へ移動した。
 「その程度の力量でこの俺を殺れると思ったのか?あん?なめんなよ。」
 「流石は一国を任されることはありますね。何時から気付いていらしたのですか?」
 「剣を抜いた時だよ。」
 「なるほど。いい勉強になりました。」軽く頭を下げた。
 「貴様ー!」一人の兵士が斬りかかった。相手の右肩から斜めに斬り下ろした。が、敵はバックステップで難無く空を斬らせた。兵士は勢い余って前屈みになった。敵は首に剣を当て引いた。
 「貴方方もあまりなめては困りますよ。これでも、今この城を預かる身なんですからね。」
 「お前がガイアントか。」
 「あれ?よくご存じで。名乗った記憶無いのですがね。」
 「逃げている間に耳にしただけさ。」
 「割と余裕があったみたいですね。己の妻さえ守れなかったのに。」
 「くっ…。」
 「部下思いな人は、妻を蔑ろにするのかな?くくく。」
 「ふっ。お前がいてうれしいよ。この城で散っていった仲間達への仇討ちが出来るのだから!お前を討ち、貴様の命を仲間達への鎮魂歌として捧げてやる!」
 「お〜怖い。くわばらくわばら。」ガイアントは上段に構えた。ベルカントは下段に構え、距離を詰めた。お互い間合いを探り、ガイアントが一歩前に出て、剣を打ち落とした。ベルカントは左に避けつつ相手の剣を右に受け流し、その流れを殺さぬように利用して、胴体を両断するかの如く力強さでかつ、コンパクトに切り裂いた。空を。ガイアントはすでに間合いの外にいた。ベルカントは一歩下がると同時に構え直した。ガイアントがまた一歩前に出てきたのに合わせてベルカントも前に出ながら、左斜め下から右斜め上へと斬り上げた。ガイアントは後ろに跳びつつ倒れた。
 「逃がさん!」と、右斜め上で、斬りから突きへと転じ突き下ろした。ドス…嫌な音が響いた。
 「言ったろ?なめんなよってよ。」