「まずは、地形を確認してもらいたい。敵拠点とその周辺は見通しがいい平地であるが、若干の起伏がある。そこで背が高い者は高いところから、背が低い者は低いところから行く。背の低い方が先行して極力高さを合わせながら進め。まぁ上から見られては意味がないがな。後は各人の健闘を祈る。」一通り作戦を伝えそれぞれ持ち場に戻っていった。
  その頃エレジー達は…。湖周辺で水軍との戦闘に入っていた。
 「なんとしても持ち堪えろ!エレジー様が道をつくられるまで。」白髪、白髭の老将事ヤースは傷つきながらも部下を鼓舞していた。
 少し時間を戻すこと2時間前。湖に着く前の馬上でエレジーはヤースに作戦を伝えていた。
 「危険過ぎますぞ。エレジー様」ヤースは驚きながら言った。
 「危険は承知している。だが他にないんだ。」エレジーは揺るぎない決意を胸に抱きながら断言した。
 「分かりました。好きにしてください。」ため息をつきながらしぶしぶっという感じで言った。
 「私に何かあったら後は頼む。」視線をそらしながら呟いた。それは、ヤースに聞こえなかったようでヤースは何も言わなかった。しばらく無言で駆けていると、前方に湖が見えはじめた頃、
 「ここら辺で休息をとり、日が沈んだら出発・戦闘に入る。」エレジーは伝令にそう伝え自分は自分用のテントに入った。そこへヤースが来て入口に手をかけようとしたところ中から、
 「開けたら命の保証はないぞ。」
 「な、何をなさっておられるのですか?」
 「ヤースか。新技の開発…中だ。」ヤースは心配そうな顔をしたが、声はいつもの調子で言った。
 「あまり無理をなさらないで下さい。」
 「分かっている。だが今のままで…は、さすがに厳しいのでな。多少無理をしなければいけないんだよ。」
 「…エレジー様。少しは私達の事を頼りにしてください。」
 「…あぁ。今回は自分の事で精一杯だからな、皆には無茶してもらうぞ。」
 「分かりました。時間になったらまた来ます。」ヤースはテントに背を向け歩きだし、各見張り台からの報告を聞き始めた。
 そして、約3時間何事も無く過ぎ、日が沈んだ。エレジーは、ヤースに近づき一言告げた。
 「今回の戦闘の全軍の指揮をお前に預ける。私は単独行動で戦闘する。決して戦闘開始したら私に近寄るな。分かったな?」