「まあ、待て話を聞こうではないか。話せ。」ランスに剣を近づけられている兵士に目線を移し尋ねた。その兵士は怯えた声で答えた。
 「も、も、申し上げます!私は後ろから物音がしたものですから、振り返ってみたところ人影が見えたのです。」
 「嘘をついてもためにはならないぞ。」ランスはさらに剣を近づけた。
 「嘘などついていません!本当なんです。」怯えながらもランスの目を見て言った。スターツはランスを落ち着けながら、
 「人の姿ではなく人影が見えたのだな?」
 「はい!さようでございます!」必死な顔で訴えかけていた。
 「最悪の場合レイジリアンの力を受け継いだ者が敵にいるかもしれないのか…。別の方法でも可能ではあるが。」
 「他の方法はこいつが嘘をついていないかぎり不可能かと思われます。」
 「何故だ?」
 「まず一点、こいつが本当の事を言っていたならば人影を見てすぐに叫んだのならば他の兵達が見ていないのがおかしい。その人影が岩などで作られたものだとしても消えるのが早過ぎます。それにここまで戻ったときに見たのですが、何かがいた形跡・何かがあった形跡さえもありませんでした。二点目は、敵にはそんなめんどくさい事をする必要性が全くと言っていいほどありませんでした。敵から見たって気が抜けていたのが分かる…長い間戦場に身を投げ出していた敵たからこそ分からないはずがないのです。三方を押さえられていたのだから下手な事をせず完全に包囲してしまえば我が部隊は全滅…よくて10%ぐらいが生き残り敗走しておしまいだったのですから。」軽く肩を竦めながら言った。
 「何かの失敗が起こったて事か…。なら敵はレイジリアンの地覇術を受け継いだ者が敵に…。」スターツは苦々しいと思い顔を歪めた。
 「いかがなさいますか?」
 「ん?何がだ?」
 「はっきり申し上げますが、今のスターツ様では勝ち目はほとんどありません。それでも戦いますか?無難に無理をせず退却致しますか?」
 「生きてレン城で会う約束をしたんだ。今逃げたら何も変われない!部下達には悪いが最後まで付き合ってもらうからな。」笑顔で言った。しかしその目からは揺るぎない覚悟を見てとれた。
 「わかりました。ただし無駄死にはなさらないでください。スターツ様には生きてレン城へ行かなくてはならないのですから。」