「そうかそうか。遠慮せずに入れ。」
 「いやいや。遠慮してないから。急いでるの。」
 「ふ〜ん。」エレジーは大きく息を吸って、
 「誰……。」タガールは素早くエレジーの口を手で塞ぎ、部屋に躊躇いがちに入った。エレジーは入ってきたのを確認しながらドアを閉め、呻き始めた。タガールは慌てて、手を離した。
 「少しは話そうか、と思わないのかね?黙っていては疲れるだろう。あいつは…。」
 「止めてくれないか。認めたくないし、認めてしまったら、サザークル国にレイジリアンの力を受け継いだ者が三人いることになる。」
 「それとこれとでは、話しが違う。あいつは、お前の兄貴の事が…。」
 「そっちか。確かに昔は心を寄せていた、と言えばあいつの気も楽になるのか?これから殺し合わなくてはならないのに。俺の所にくる情報は、あいつだって知っている。」
 「じゃあ、何で連れてきた!お前が来るな、と言えば従うんじゃないのか?お前はあいつに何をさせようとしているんだ?」
 「あいつが俺の言うことに素直に従うなんてありえないさ。あいつは一途なんでね…。」
 「そうかい。スターツは大広間を左に曲がってすぐある部屋だから早く行け。」
 「左来たらこっちに着いたんだけど…。」
 「はいはい。とっとと行け。私は眠いんだよ。行け行け。それとも私を寝かさないつもりなのかい?」タガールは素早くドアから出ていった。
 「え〜と…ここら辺だと思うんだけどな〜…。」タガールは目当てのドアをキョロキョロ探しながら歩いていた。
 「発見!あれに違いない。鍵、鍵、鍵挿すとこ発見〜。…?鍵がない…。なんで?!しゃーないか…。スターツ起きてる?」
 「………。」
 「スーちゃん起きてる?」ドアが壊れんばかりに揺れた。
 「よかった起きてるみたいだね。スターツの部隊についてなんだけどさ。基本的な戦に必要な人数に物資は揃ったけど、他に必要な物ある?」
 「…針。出来るだけ多く。」
 「それだけでいい?」
 「………。」
 「分かった。明日が決行日だからしっかり休みなよ。じゃあね。」
  次の日の夜。北門前にて。
 「準備は万全ですか?皆さん。」
 「お前当然な事聞くなよ。」
 「万全でございます。」
 「陛下のおかげで万全です。」