「…もう、いいです。じゃあ“ごゆっくり”。」


バタン!!

柚樹は、怒りながらそう言うとその場を去った。
部屋を出る時の顔は…なんだか寂しそうにも見えた。


うッわぁ、完璧機嫌悪くなっちゃったぁー…。


「なんか…悪かったな、弟怒らせちまって。」

上目ずかいな感じですまなそうな顔で私を見つめる私の彼氏。ヤバイね、カッコいい…。
一瞬見とれてて返事に遅れちゃった。

「あ、ううん。大丈夫。柚樹は優しい子だしすぐに仲良くなれるよ。」


「あぁ、そうだな。なんてったってお前の弟だもんな。」


「うん♪」



「んじゃ、さて…と。そろそろ帰ろうかな。」


「え…もう帰っちゃうの?」


「あぁ。帰る。だから、弟と仲直りしろよ?
俺が帰る心配もしながらも、さっきの弟の様子…気になってんだろ?」


「うん…。いつもはあんなじゃないから余計、ね。」

「そっか。」



そんな会話をしながらもう玄関まで来ちゃった。
早いよ。
もっと距離があったらなぁ…。


「あら、もう帰るの?もしかして、優也と柚樹のせい?」


ママ…単刀直入!!
そして、なにげに当たってるから驚き…。


「いや、実は用があったのを思い出しまして…。」


「そっかぁ。」


用事…?そんなこと言ってなかった。
あぁ、嘘をついたんだ。気をつかった優しい嘘を。