.......。



 《ただのうさぎじゃない。》
 そう言って笑ったうさぎは、うさぎにしか
 見えなかった。
 ―・・・服を着て、言葉を話すこと以外は。







 「あ・・・信じてませんね?」






 当たりまえだ。






 「貴方、名前は?」



 「・・・はい?」






 うさぎに名前を聞かれたのは初めてだ。
 そう思いながらも、答えてみた。







 「・・・・ラピス、ラピス=ハート」



 「それでは、ラピス?」



 「え・・・・・?」










 名前を呼ばれて顔を上げると、ラピスはぱ
 っちりとした目をさらに見開いた。
 私の名前を呼んだうさぎは、《ただのうさ
 ぎ》であるはずだった。
 ―・・・・服を着て喋る以外は。








 「僕は、時計兎。タイムとでも呼んで下さ
 い」









 そう言って《彼》は優雅にお辞儀をした。