私は号君の絵を見ながら妙な感情に襲われたのだ。



愛しくて堪らなくなり、体の中から沸き上がる熱くて生々しい感情が身体中に充満していることに気づいたのだ。



こんなにも、号君に盲目になっていたとは自分自身も知らなかった………いや知っていたけど知らない振りをしていたのだ。



昔から私は号君を独り占めしたかった、学校で号君に近寄る女子生徒をが妬んで『殺してやろう』と思ったこともあった。号君に好意を持つすべての女性を敵対視していたのだ。



ただ、私は理性でその衝動を止めているだけの状態だった。



私にも欲望があるのだ、号君を独り占めしたいという欲望が……………。



やはり私は、悪魔だなと思う、嫉妬と欲望という爪を隠している悪魔なのだと。


私はクリアファイルを大事に鞄の中に戻し、バスを降りた。



私は家には向かわずに商店街を目指した。



それは『あることをする』ために………………。



商店街は人々が波のように揺れていた。
この人々も欲望を隠している悪魔なのだろうなと私は思うのだ。



誰も他人の心の中は知らない。
知らないからこそ自分が描いた理想像を相手に求めるのだろう。



私は商店街の中心に立ち、そっと眼を閉じた。



笑い声、無数の足音、スピーカーから流れる甘ったるいラブソングが私の鼓膜を揺らした。



しばらくすると、真っ白な空間に移動したかのように雑音も私の耳から消えた。


その真っ白な空間の中に号君が立っているのを見て、私が笑うと号君も微笑み返してくれた。



私はゆっくりと眼を開けて鞄の中から取り出した。