号君にお線香を供えたからそろそろ帰ろうと立ち上がると、私の後ろから美千代さんの声が聞こえた。



「亜美ちゃん、今日は泊まってくれる??お父さんも久しぶりに亜美ちゃんに会うと喜ぶだろうから」



私は、少し悩んだが美千代さんの好意に甘える事にした。
私も浩司さんに久しぶりに会いたいと思ったからだ。


夕食の手伝いをすることになったのだが、私は料理が苦手なのだ。
その事を美千代さんに恥ずかしがりながら伝えたら、優しく笑いながら料理を一から教えてくれた。



キッチンは綺麗に整理されており、モデルマンションのキッチンみたいだと私は思った。



今日のメニューは『ヴィーナー・シュニッツェル』ドイツの肉料理らしい。
薄く切った肉をさらにステーキハンマーで叩き、小麦粉をたっぷりつけ、溶き卵に潜らせパン粉をつける。



パン粉を挽き立ての黒胡椒で味付けしておく。
そしてやや多めのバターかラードで炒め揚げすると完成らしいのだか、私には難しいので野菜サラダとコンソメスープを作ることにした。


美しい手際で料理を作る美千代さんに見とれながら私も頑張ってコンソメスープと野菜サラダを作った。



まぁ、野菜を切るだけなのだが、私からしてみればかなりの進歩なのだ。



テーブルに食器を並べながらヴィーナー・シュニッツェルの香りに心を奪われていた。



すると玄関からただいまと浩司さんと思われる声が私の鼓膜に響いた。